~古の人々からの贈り物 再生の場所~
初めて熊本の人吉を訪れた時、私はその自然の圧倒的な美しさに言葉を失いました。
美しい空の青、それを映すように清くなだらかに流れる川、そして緑深い森の木々。
まるで自分の身体が自然の中に溶け込んでいくような、不思議な感覚に包まれたのです。
しかし、その時は私用により、後ろ髪を引かれる思いで途中で帰ることに。
「必ず戻ってくるから、待っていて」
――誰にともなくそう心の中で告げたあの日の約束を果たすように、
今年の5月、新緑あふれる最高の季節に再び人吉の地を踏むことができました。
~歓迎の風とツクシイバラの庭で出会った音色~
一歩足を踏み入れると、前回も感じた深い空の青さと、新緑の快い風が私を迎えてくれました。
木々のざわめきが、まるで「おかえり」と歓迎してくれているかのようです。

旅の途中、美しいバラ園に立ち寄りました。
薔薇の手入れをされている奥様と定めのないお話をしていた時のこと。
私たちが持っていた音叉(おんさ)を目に留めた奥様が、こう仰いました。
「なんていうものなの? 素敵な音が聞こえて、不思議な気持ちになるわ。聞いたことがないの」
音色に惹かれて声をかけてくださった奥様へ、私なりに一所懸命その魅力を説明しました。
想いは伝わったでしょうか。
希少なバラの原種「ツクシイバラ」の存在を知り、「またこれを見に訪れたいですね」と話すと、
奥様は嬉しそうに、にっこりとうなずいてくださいました。

~球磨川の歴史と「水神の涙」~
人吉の優雅な宿「鮎の里」に到着した瞬間、胸が高鳴り「帰ってきたよ!会いたかった!」と言葉が溢れ出てしまいました。
麗しい女将さんとの再会も、本当に嬉しいものでした。
その夜、郷土史家の益田氏から、過去の水害からこの土地を復興させるまでの貴重な映像とお話を伺いました。
ここまで街を回復させるために、人々がどれほどの心血を注いできたのか。その歩みに胸が打たれます。
古よりこの地を守り、時に猛威を振るってきた球磨(くま)川の歴史。益田氏の著書『水神の涙』にある一節が、今も脳裏から離れません。
「水神は人々に告げた。山を返せ、川を返せ、子供を返せ、そして敬えと」
なぜか胸が熱くなり、涙がこみ上げてきました。
現代の便利な世の中で、私たちがいつの間にか見失ってしまった「尊く、大切なもの」。
それを再び人々に思い出させるための出来事であり、私たちはこの歴史を、次の世代へと語り継いでいかなければならないのだと強く感じました。

~青井阿蘇神社の神聖な気、そして「鹿目の滝」での大浄化~
翌日は、厳かな空気が満ちる神聖な「青井阿蘇神社」へ。
御神木に触れ、その圧倒的なパワーを肌で感じながら境内を巡るうち、
人知を超えた大いなる力がここに宿っているのだという、敬虔な気持ちに満たされていきました。
そして、この旅最大の浄化の場である「鹿目の滝(かなめのたき)」へ。
深い森を抜け、険しい道を、まるで自然界の精霊や妖(あやかし)たちに手引きされるようにして進み、
ようやくたどり着いたその場所。
「ここに来たら、全てを受け止めてもらえる」
そう確信した私は、何も隠さず、ありのままで滝の水に身を浸しました。
溜まっていたものをすべて洗い流してもらうように、水の中で「気持ちがいい!最高!うれしい!」と、まるで子供の頃に戻ったように叫んでいました。
身体のこわばりが解け、水の中に軽く浮いているような感覚。
そこで皆で音叉を響かせると、それぞれの音が美しく重なり合い、まるで雲の上で演奏しながら舞っているような極上の心地よさに包まれました。
すると不思議なことに、一匹の沢蟹がひょっこりと姿を現したのです。
おとなしく佇むその姿は、楽しそうな人間に興味を持って挨拶に来てくれたかのようで、愛おしさが込み上げました。
~魂の共鳴:初めての施術と解放の夜~
すっかり身体を軽くし、大地にグラウンディングした後は、この旅のもう一つの山場である「他者への施術提供」です。
前日には練習を重ね、アロマ音叉のデザインロゴが入った施術用エプロンも配られて気分は最高潮でしたが、
やはり初めての方への施術には緊張が伴います。
しかし、いざ向き合ってみると、不思議なことにそのクライアント様は、私自身の内面と対峙するような、深い課題を持った方でした。
「一人じゃない。信頼できるパートナーと組み、周りには大好きな仲間たちがいる」 そう自分に安心を許し、感じるままに手を委ねました。
クライアント様が少しでもこの空間で身体を緩め、私がこの一年間向き合ってきたものと同じように、何かを開放できるようにと願いを込めて。
気づけば肩の力は抜け、後半はただ感覚のままに動いていました。
神社で感じたあの神聖な空気感が満ち、施術が終わった瞬間、私を導き支えてくれた仲間への感謝が溢れて止まりませんでした。
その夜の宴は、最高の解放感から大いに盛り上がり、
音楽堂でのフルートとピアノの美しいセッションに心ゆくまで酔いしれる、至福のひと時となりました。
~人吉城跡の神秘「ミクヴェ」と、大地と繋がる至高の瞬間~
最終日は、人吉城跡へ。
そこには、謎に包まれた地下遺構「ミクヴェ」が存在します。
静まり返った場所へ続く石の階段、底が見えない深淵。
それは恐怖というよりも、「人が安易に踏み入ってよいのだろうか」と思わせるほどの神聖な厳かさがありました。
ユダヤ教の宗教的な沐浴場(洗礼の場)だったのではないかという説や、あるいは貯水場だったという説など、
ガイドさんの諸説を聞くうちに、歴史への好奇心がどんどん掻き立てられていきます。
昔の歴史に思いを馳せる、そのこと自体が、現代へ、そして未来へと物語を紡ぐ大切な縦糸になるのだと感じます。

そして、初めて足を踏み入れた人吉城跡の開けた景色は、まさに圧巻でした。
参加者全員で音叉を鳴らし、まるで舞を踊るように過ごした時間。
裸足で踏みしめた大地からは、滝の時とはまた違う、力強いエネルギーが身体の奥底からみなぎってくるのを感じました。


「ああ、これが求めていた瞬間だ。私は、生きている」
そう心から実感せずにはいられませんでした。
~旅を終えて:満たされた心と深い感謝~
帰りのバスの中で振り返ったのは、前回果たせなかった想いをすべて味わい尽くしたという、圧倒的な達成感でした。
今回は、人の心の温かさ、真摯な想いに触れる機会が本当にたくさんありました。
まだまだ語り尽くせないほどの思い出がありますが、これほど豊かでリフレッシュされた3日間を過ごせたのは、
この旅を企画してくださったマイアさん、みなみさん、そして出会ってくださった素晴らしい皆様のおかげです。
心からの感謝を込めて。
人吉、また必ず戻ってきます。
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